どうも。Champignon(きのこ)です。
ほーりつ解説のお時間です!!
このコーナーでは、法律の大枠を正確さを犠牲にして、簡潔に紹介していきます。
今回は、非法律系の方々に向けた法律解説をしていこうと思います。
お題はこちらです。
政府がコスプレの著作権をルール化へ 海外への積極展開を後押し
ということで、著作権法のお話を少ししてみようと思います。
そもそも著作権とは。
この記事をご覧になった方の中には、
「えっ?著作権って本とか絵とかに発生するものだと思ってたけど、コスプレに発生したりするの???」、「コスプレ好きなんだけど、これからできなくなっちゃうの!?」
と思われた方もいらっしゃるかと思います。
そこで、まずは著作権がどんなものかをお話していこうと思います。(あくまで非法律系の方に向けた記事なので、法的な正確性はある程度犠牲にします。)
ここまではみなさまのイメージ通りだと思います。
じゃあ、
「著作権法」で保護してもらえる「著作権」が付与される「著作物」って一体どんなものが該当するの???
が、次の疑問として出てくると思います。
(1)「思想又は感情」を表現したものであること
→ 単なるデータが除かれます。
(2)思想又は感情を「表現したもの」であること
→ アイデア等が除かれます。
(3)思想又は感情を「創作的」に表現したものであること
→ 他人の作品の単なる模倣が除かれます。
(4)「文芸,学術,美術又は音楽の範囲」に属するものであること
→ 工業製品等が除かれます。
(1)から(4)を満たすものが、「著作物」と認められ、「著作権」が付与されるわけです。
その他は、下記注意点がありますが、さっと流す程度に見ておいてください。
・ 著作権の保護期間は,原則として著作者の生存年間及びその死後70年間です。(文化庁HP)
・ 特許権や商標権と違い、出願などは必要なく、表現したときに権利は発生します。
コスプレって著作物なの??
さて、ざっくりとした法律上の定義を見ていただいたうえで、どんなものが「著作物」に該当するかも、法律で例示してくれています。それが下記です。
言語の著作物 | 講演、論文、レポート、作文、小説、脚本、詩歌、俳句など |
音楽の著作物 | 楽曲、楽曲を伴う歌詞 |
舞踊、無言劇の著作物 | 日本舞踊、バレエ、ダンス、舞踏、パントマイムの振り付け |
美術の著作物 | 絵画、版画、彫刻、マンガ、書、舞台装置など(美術工芸品を含む) |
建築の著作物 | 芸術的な建築物 |
地図、図形の著作物 | 地図、学術的な図面、図表、設計図、立体模型、地球儀など |
映画の著作物 | 劇場用映画、アニメ、ビデオ、ゲームソフトの映像部分などの「録画されている動く影像」 |
写真の著作物 | 写真、グラビアなど |
プログラムの著作物 | コンピュータ・プログラム |
参考になりそうな判例として、
「ファストファッションで著名なブランド「Forever21」の衣装等を使用したファッションショー」に関して著作権が発生するかどうか、というのが問題になったことがあります。
このとき、著作物であると原告が主張したのは以下です。(コスプレに関係しそうなものだけ抜粋してます。)
②着用する衣服の選択及び相互のコーディネート
③装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート
④舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け
⑤舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け
⑥これら化粧,衣服,アクセサリー,ポーズ及び動作のコーディネート
(知的財産高等裁判所平成26年8月28日判決より)
今回はコスプレそのものにフォーカスしようと思うので、より関係してくるのは赤字の部分ですが、端的にまとめると、
「実用的なものは美術じゃないから著作権では保護しないよ!」
って感じです。少し違和感があるかもしれませんが、商業的なデザインを保護する法律は他にあり、そことぶつかることなどが考慮されて、他の判例等でも似たような判断が下されています。
しかし、徐々に判断基準が変わろうとしており、今後この考え方が変わっていくかも、と期待されています。(物好きな方は「TRIPP TRAPP事件判決」をググってみてください。)
所感
まず、「コスプレが一切できなくなる??」とご心配の方に向けて、
コスプレが非営利目的なら著作権法に抵触しないが、写真をインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)に投稿したり、イベントで報酬を得たりすれば、著作権侵害に当たる可能性が出てくる。(日刊スポーツ)
とされており、ひとまずプライベートでのコスプレには何ら問題ありません。ではそれ以外はどうなるのでしょうか。
パーティー用に装飾された服でも上記のような判決が出ているので、コスプレでも現状の裁判所の考え方からすると、コスプレの保護は難しいような印象ではあります。。。(が、
ルール化や法改正などを念頭に検討しているわけではなく、「コスプレイヤーの皆さんが安心してコスプレを楽しむことができる環境」に向けて必要な検討(Jcast ニュース)
ということなので、法改正まではしないようで、指針やガイドラインを出して、そこでコントロールするということみたいです。現行の著作権法で本来保護されないものを保護しようというのであれば、法改正をすべきですが、どのような要件に該当するコスプレを保護する、と主張するのかはこれからの見ものです。
(そもそも、保護するコスプレって、
・コスプレの衣服を作っている「メーカー」を保護するのか
・コスプレのもととなったキャラクターの「原作者」を保護するのか
・「コスプレイヤー」を保護するのか(なんか冒頭のニュースでは、コスプレイヤーの「えなこさん」が映っていたので、これなのでしょうか。自作している人は別ですが、単に売り物を着ているだけで権利の主体になるのは違和感ありますよね。。。
後、コミケとかでコスプレイヤーを撮影したりしますが、その写真にもコスプレの著作権って及ぶんですかね。そのあたりも今後の議論が注目です。)
一方で、もしかしたら、コスプレを著作権で保護する、という潮流がファッション業界の著作権保護を促進するかもしれないですねー。
その他
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肖像権・パブリシティー権との関係
本筋ではないですが、人を写真や動画に収める際は、「肖像権」や「パブリシティー権」(有名人)というものも発生するので、コスプレをした写真・動画には、
「写真を撮影した撮影者に発生する著作権」、「コスプレの著作権」、「被写体の肖像権・パブリシティー権」に注意する必要がでてくるのかもしれないですね。
「肖像権」や「パブリシティー権」については、機会があれば記事にしてみようと思いますが、今回はWikipediaからの引用で、失礼します。
肖像権は他人から無断で写真や映像を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる考えであり、人格権の一部としての権利の側面と、肖像を提供することで対価を得る財産権の側面をもつ。また、肖像を商業的に使用する権利をとくにパブリシティ権と呼ぶ。一般人か有名人かを問わず、人は誰でも断り無く他人から写真を撮られたり、過去の写真を勝手に他人の目に晒されるなどという精神的苦痛を受けることなく平穏な日々を送ることができるという考え方は、プライバシー権と同様に保護されるべき人格的利益と考えられている。
著名人や有名人は肖像そのものに商業的価値があり財産的価値を持っている[1]。
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コスプレの元になるキャラクターの著作権
法律的に厳密な話をすると、「キャラクター」そのものに著作権は発生しません。
すごく違和感があるかもしれませんが、下記の著作物たりうる条件を思い出してください。
キャラクターは、性格やバックボーンなどを備えた「アイデア」であるとされており、それが漫画やアニメで表現されて初めて、著作物として認められ、著作権が与えられるのです。
じゃあ、パクっても大丈夫、という話にはなりません。通常キャラクターは表現されており、パクリたちは、それに基づいて盗作する(というかそれ以外の手段がない)ので、どうやってもアウトになります。こんな風に、、、(JIJI.COMより)
まあ、キャラクターの著作権ってそんな風に考えるんだー、くらいに見ておいていただければ。
最後に
政府が探るのは、コスプレ文化に水を差すことなく著作権を保護する道だ。著作権法などの適用が厳格すぎれば、コスプレ離れが起きかねない。そもそもコスプレーヤーらが使用許可を得ようにも原作者側との窓口がなく、現状では困難だ。
今のところ法改正は想定しておらず、著作権使用料が求められる事例を明確にして、啓発する案が浮上する。自民党でも知的財産戦略調査会の山田太郎事務局次長は「双方が安心して楽しめる仕組みが必要だ」として、著作権者を簡単に調べられるデータベースを整備するよう提案している。
としているが、音楽で言うJASRACみたいな団体がコスプレにも出来上がるのかな。
そうなった場合に、徐々に力を持ち出して、JASRAC vs 音楽教室みたいに徐々に社会の感覚とかけ離れた執行がなされるようになってくる、みたいな自体が起こらないことが起こらないことを期待したいものです。
それにしても文化庁は最近大変ですねw
例えば、
著作権、放送と同等に ネット同時配信で文化庁案
(放送と配信で必要な権利処理が異なるため、いわゆる「見逃し配信」などの障壁となっている。そのため、そのルールを1つにする(放送でOKだったら、原則配信もできる)という法案。河野太郎氏に檄を飛ばされて、やっと着手したようだけれども、、、共同通信社より)
も控えてますし。。。
ほな、今回はこれくらいで、さいなら。
一応、超マニアックな方向けに、海外でのファッションショーの著作権紛争がまとまったリンクも貼っておきます。
The Top 5 Most Fashionable Intellectual Property Disputes To Walk This Year’s Runways at New York Fashion Week