どうもChampignon(きのこ)です。
今回は法律、下請法のお話です。
この記事を読んでいただきたい方
●新社会人の方
●下請事業者と付き合いがある営業職の方
つい最近、このような記事がありました。
マツダ、下請けメーカーに「手数料」請求 公取委が勧告
(公取委の正式発表内容はこちら。)
これは、マツダが下請法という法律に違反して取引を行っていた、というものです。
行っていた行為としては、不当な経済上の利益の提供要請ということです。
この規模の会社なので、おそらく法務や受発注を管理している部署が下請法を把握していなかったことは考えづらいです(とはいえ、計上して他の支払い等に使っている、、、)。
しかし、会社が大きくなればなるほど、法務や管理部門の目の届かないところがでてきます。
そのようなところで、
(悪気がなくとも)下請法違反の行為をしてしまうと、
会社全体として下請法違反が問われてしまうのです!!
そのため、
下請法は、営業や法務に関係のない部署でも、
ある程度の規模感の会社に勤めている方には、必須の知識です。
もし、
「自分は上場企業じゃないから大丈夫!」
なんて思っている方がいらっしゃれば、必ずこの記事は最後まで読んでください!!
もしかしたら、気付いていないだけであなたの会社も下請法の規制の対象となる会社かもしれません。。。
3分で理解したい方は、次の「下請法の概要」の章のみご覧ください!
注意:
この記事は、下請法に対する意識を作っていただくことを目的にしています。
法律の自己判断は禁物です。
必ず社内の担当部門(法務等)に最終確認をするようにしましょう。
下請法の概要
この章の流れ
法律を理解するときは、
どういうときが違法になるか、をいきなり学ぶより、
その法律の規制の趣旨を理解しておくと、便利です!
その理由は、
違法になるケースを忘れたときでも、
「あれ?これやばくね??」って気付けるようになります。
職種が法務部などと違い、直接法律に関しない方は、このことを意識しつつこの記事を読んでいただけるとよいと思います。
そのため、
・下請法の規制趣旨
・うちの会社は下請法の対象?
・どういうことをしてはいけないか
という流れで進めていきます。
読み終えていただくころには、
という、下請法の違反行為がまったく濾過されていない状態から、
と、しっかりと下請法の趣旨を理解して、違法な取引に気付き、取引開始までに違反行為を止められるような状態を目指していただきます。
下請法の規制趣旨
まずは規制趣旨です。
こちらは公取委のHPに簡潔に記載されています。
下請取引の公正化・下請事業者の利益保護
これをもっと平たくすると、
取引で下請事業者をいじめないで!!!
ということです。
なぜ、こんな法律があるかというと、
多くの日本の中小企業は、
超大手の企業1社または数社との取引に依存している、
という現状があるからです。
その結果、その取引先から言われることにはすべて従わざるを得なくなり、健全な会社運営や新しい技術への投資が難しくなったりします。
そこで、中小企業に対しては、「法律で」そのような取引を行ってはいけないと定められることになりました。
この趣旨から、このあと紹介する具体的な違反事例をご説明せずとも、
下請事業者をいじめるようなことは禁止される
ということが予想いただけると思います。
うちの会社は下請法の対象?
下の図の通り、取引業務によって基準は異なります。(公取委HPより)
これに該当する当事者が行う取引は、
すべて下請法の規制対象になります。
まずは、自社の会社の資本金を確認して、
「親事業者」に該当するかどうか、確認しておきましょう。
どういうことをしてはいけないか
具体的な行為類型は、公取委のHPから引用した表を示しておきますが、
先述の通り、
下請事業者をいじめるようなことが禁止されています。
自分の会社の立場からではなく、下請事業者の立場に立って、考えることが大切です!
こんな考え方はだめです。
×「普段からたくさん取引してやってるんだから、これくらい我慢しろ。」×
×「これが飲めないのであれば、取引先変えてやればいいや。」×
以下の表は、「禁止事項」(オレンジ)の部分だけ目を通しておけばよいと思います。
どれも法律の趣旨を理解していれば、当然禁止されるだろう、ということばかりです。
禁止事項 | 概要 |
---|---|
受領拒否(第1項第1号) | 注文した物品等の受領を拒むこと。 |
下請代金の支払遅延(第1項第2号) | 下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないこと。 |
下請代金の減額(第1項第3号) | あらかじめ定めた下請代金を減額すること。 |
返品(第1項第4号) | 受け取った物を返品すること。 |
買いたたき(第1項第5号) | 類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。 |
購入・利用強制(第1項第6号) | 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。 |
報復措置(第1項第7号) | 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由としてその下請事業者に対して,取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。 |
有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号) | 有償で支給した原材料等の対価を,当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること。 |
割引困難な手形の交付(第2項第2号) | 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。 |
不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号) | 下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。 |
不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号) | 費用を負担せずに注文内容を変更し,又は受領後にやり直しをさせること。 |
よくあるミス
ここには、私が法務部としてアドバイスしてきたなかで、よくある間違いについて列挙しておきたいと思います。(随時追加)
下請事業者が了承していたら問題ない?
駄目です!!!
下請事業者が了承しても、それはあなたの会社の立場を恐れての了承であるかもしれないからです。
下請法では、了承があっても、違反にならないものではありません。
マツダの事件にあてはめると
事案の概要
複雑な図ではありますが、要は、
赤矢印の部分が問題視されたという事案です。
公取委の勧告において、赤矢印の部分は、
「提供させる金銭の算出根拠及び使途について明確にせず,「手数料」として,平成30年11月から令和元年10月までの間,金銭を提供させ,当該金銭に対応する何らの給付又は役務を提供することなく,自社の事業に係る各種取引の支払等に充てていた。」
「「手数料」を自社の指定する金融機関口座に振り込ませる方法で提供させた際に,振込手数料を支払わせていた。」
と記載されております。
下請法への当てはめ
資本金
まずは、資本金のチェックです。
製造委託されていたものは、ボルトなどのようなので、資本金の基準の表のうち
「物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合」の方に照らし合わせます。
すると、マツダの資本金は、約「2800億円」と、
余裕で親事業者たりうる「3億円」を超えている、ということになります。
したがって、マツダは資本金3億円以下の事業者と取引するときには、下請法を遵守しないといけないということになります。
禁止されている行為か?
公取委の勧告によると、
「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」の規定に違反する行為があったようです。
先述の禁止行為に関する表のうち、「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」を見てみましょう。
不当な経済上の利益の提供要請
下請事業者から金銭,労務の提供等をさせること。
はい、アウトー、ですね。
もちろん、取引として、
製造を委託して、その対価を受け取ることは全く問題ありませんが、
先述の事案の概要にもでてきましたが、
「提供させる金銭の算出根拠及び使途について明確にせず」
「金銭を提供させ,当該金銭に対応する何らの給付又は役務を提供することなく」
というのは、
下請事業者いじめ以外のなんでもなく、
下請法の規制趣旨にも、具体的な禁止規定にも反するものであり、
マツダは下請法に抵触していた、
と判断されたことになります。
さいごに
いかがだったでしょうか?
法律を勉強するというのは、
法律に携わる職種ではない方には苦痛なものかと思いますが、
実際の事例を見ながら、法律の趣旨を理解していくと、
細かいルールまで覚えていなくても、危ない香りを嗅ぎ分けられるようになると思います。
(下請法の趣旨を忘れてしまった方は、それだけでも見返しておいてください!!!)
自分事としてよんでいただけていれば、本当に幸いです。
ほな、さいなら。